パラリンピックのメダリストに報奨金を出すと、舛添厚労相が発表しました。
金額は金メダルが100万円、銀メダルが70万円、銅メダルが50万円。財源は民間からの募金を充てる方針。
足りない場合は、国費の運用益で運営する障害者スポーツ支援基金から支払う。
パラリンピックとオリンピックは明らかに違います。
オリンピックは、原則として全ての人にオープンですが、パラリンピックは「身体障害者」のみの競技会です。
本来なら金メダルは世界最高のアスリートにのみ与えられるべきだと思うのですが、限られたカテゴリーのメダルも同等だとする考え方に疑問です。
パラリンピックのアスリートが劣っているとか、努力が足りないとかではなくて、オリンピックの位置づけをあやふやにしてしまうのではないかと思うんです。
さらに、身体障害者だけしか出られない差別された競技であることを意識しておくことも大事です。
知的障害者が同じ扱いを受けていないことがひとつの典型としてあげられます。
障害者スポーツの振興を本当の意味で考えているなら、個人に与える報奨金ではなく、競技団体の活動費を補助するのが本筋のはず。
今回、唐突にパラリンピックの報奨金が話題になった背景には、衆院選をにらんだ自民党の現金バラマキ作戦が考えられます。
本題に戻って。
オープンな競技で最高のアスリートとなった者のみに与えられるのが金メダルだと思うので、エンブレムが違うだけで、ほぼ同じ材質のメダルをパラリンピックだけに与えるのは筋違いだと思います。
北京五輪のオープンウォーターの女子10キロに出場した南アフリカのナタリー・デュトワ選手。
パラリンピックの選手でありながら、オリンピックに堂々と参加して16位の成績を上げています。
パラリンピックの金メダルよりも16位の成績のほうが価値が高いかどうかは別にして、障害者であることを理由にしない垣根のない競技への参加姿勢には、世界中から賞賛の声が上がっています。
デュトワ選手は、「自分が足が1本しかないとは考えていない。試合に参加したいのであれば、丈夫な体を作らなければならない。私にとって体の障害は問題ではない。私は一本の足だけでも遠くまで泳げる」と語ったという。
パラリンピックは戦争で負傷した兵士たちのリハビリとして「手術よりスポーツを」の理念で始まっています。
メダルを目指す特別なアスリートのためにパラリンピックが変貌していますが、障害者スポーツの祭典としての本来の価値を間違えていってしまうのではないか。
パラリンピックのメダリストに報奨金を出すなとまでは言いませんが、身体障害者だけが対象となった限定された競技会であることを念頭において、オリンピックのメダルとの違いを認識しておく必要がある。
少なくとも報奨金は競技団体がやることであって、スポーツの所管ではない厚労相が音頭を取って金をばら撒くのはおかしい。
とりもなおさず、政権の人気取りにパラリンピックを悪用する自民党は最低だ。
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