恐れていたことが次々と現実になっています。
原発被害地域からの農産物に基準値を大幅に超える放射能が検出されてしまいました。
汚染された農産物が出荷停止になるのは当然ですが、これによって東日本全域の農産物への風評被害に波及しないことが望まれます。
そのためには、国民に対して正確な情報提供が必要です。
ところが、政府の発表は安全を誇張するあまり、客観的な評価を無視して主観的な表現に陥ってしまっています。
放射能に汚染された農産物の『安全性』を表現するために、CTスキャンを安全の指標に誤用してしまっています。
枝野幸男官房長官は19日の記者会見で、福島県内の原乳と茨城県内のホウレンソウ6検体から、食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと発表した。
枝野氏は今回の検出と同量の放射性物質のホウレンソウと牛乳を1年間とった場合の被ばく線量に関し、牛乳がCTスキャン1回分、ホウレンソウが5分の1程度と説明。「ただちに皆さんの健康に影響を及ぼす数値ではない。冷静な対応をお願いしたい」と呼びかけた。
枝野氏はCTスキャンが健康診断に使われるので『安全な被ばく』と勘違いしているようですが、CTスキャンは危険を伴う被ばくリスクを理解してガンを早期発見するための手段です。
参考記事 ⇒
CTスキャンの被爆量、想定より多かった 数十年後にがん発症リスク
毎日のように口にする一種類の食べ物から、CTスキャン1回分に相当する被ばくを受けるということは、安全どころから相当危険な状況であるわけです。
CTスキャンに代表される放射線検査は、急性期の放射性障害が起こる可能性は皆無だと言われていますが、同時に、数か月 - 数十年後に初めて顕在化してくる悪性腫瘍のリスクの増加、あるいは子孫への遺伝的影響があります。
これらは確率的影響と呼ばれ、そのために放射線検査は必要最小限のみ行い無駄な被曝をし ないようとどめることが原則であるといわれています。
放射線の安全性を誇張するために、胸部X線検査やCTスキャンを比較の対象にすることは逆効果です。
暫定基準値は放射性物質にさらされた食品の出荷制限などを検討するためのもので、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受けて政府が設定した値です。
その政府が、自ら設定した基準値をないがしろにして主観的な評価基準を使ったら、国民は混乱するし、政府への信頼性も揺るぎます。
暫定基準は、一定の安全率を見ているので健康には影響ないという保守的な専門家もいますが、中立的な専門家の意見では、「今回の検出値は暫定基準の数倍に達しているので、安全とは言い切れない」と述べていました。
福島原発の事故で私たちの生活環境に放出された放射能の影響が大きくなるにつれて、政府やマスコミの発表はどんどん主観的に、あるいは定性的になっています。
本来なら、より客観的に、定量的に分析されなければならいはずです。
日本国民は、真実を突きつけられることを避ける国民性だということでしょうか。
発表する側に原因があるのか、受け入れる側に合わせているのか、問題の本質の所在に困惑するばかりです。
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大震災・放射線と食品 正確な情報発信が肝要だ 琉球新報
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福島第1原発事故 原乳、ホウレンソウから放射性物質--福島・茨城産
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110320ddm041040122000c.html
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