2008年05月27日
・松くい虫防除で子供に健康被害

出雲市内の児童や生徒473人がマツクイムシ防止の農薬空中散布が原因とみられる目のかゆみなどを訴えた問題で、市内の15の小中高校と市は26日、子供たちを病院に連れていくなどの対応に追われた。
県内ではほとんどの市町村が農薬の空中散布を取りやめる中、出雲市の散布量は突出して多く、市民からは「これを契機に空中散布をとりやめるべきだ」との声が出ている。=5/27読売新聞=
松くい虫防除の空中散布は、長野県でも中止されています。
一定の効果があるとされているものの、二次被害の甚大さを考えれば中止は当然です。
しかし、ヘリコプターによる広域の空中散布は取りやめになっているものの、無線ヘリを使った限定的な空中散布や、地上から空中に向けての薬剤散布は続けられています。
松くい虫の被害は、マツノザイセンチュウが寄生することに起因し、マツノマダラカミキリが媒介主とされて駆除の対象になっています。
詳細はネットで調べていただくとして、結論としては「防除に成功した例はない」というのが定説です。
そのため、重点的に保護する必要があると認められた「貴重な松」のみが薬剤で防御しているのが現状です。
松くい虫防除の薬剤が松くい虫のみに働くことはなく、今回の事故(事件?)のように人体に影響が出て初めて顕在化しました。
体の比較的大きな人体にも影響があるのですから、さらに小型の小動物や昆虫には甚大な被害が生じていると予想されます。
目先の利益に目を奪われて自然界に大きな被害を生じている恐れがあるのです。
駒ヶ根市でも防除に毎年3千万程度の費用をかけて防除しています。
しかし、将来的な防除効果を高める樹種転換は2006年度で途絶えてしまっています。
事業評価も「対策を講じなかった場合どうなったかは正確には分からないが、間違いなく被害が拡大していると思われる。」
正確にわからないのに「間違いなく」被害を防いでいると断じているあたりにお役人体質が現れています。
松林の将来像を市民と共有し、いかにして樹種転換を実行するのか、ビジョンなしの現状は役所の怠慢の側面があります。
「よく分からないけどこれしかできません」では、大事な地域の自然環境を任せるには力不足です。
5年後、10年後、20年後、50年後、100年後の構想を示し、的確な対策がとられるように、市長のリーダーシップが問われます。
今回の出雲市の事例があったことで、学校から数キロ以内の薬剤散布は当面見合わせるのが妥当でしょう。
少なくとも風下に学校が存在する場所や時期には絶対にやってはいけませんよ。