2008年09月04日
・芸術作品と工作物のはざま

先月28日の朝日新聞の記事に「作品改変に彫刻家抗議」というものがあった。
滋賀県中央子ども家庭相談センターにつくった作品「創造の翼」が無断で改変されてしまったことに作家が怒ったという。
「作品は私の分身」と抗議する作家に対し、センター側は「芸術作品として認識していなかった」と釈明。
芸術家の作ったものは『芸術』と主張する作者に対して、所有する側は施設に付属する『設備』との認識。
この『作品』が設置されたのは、24年前だからバブル経済に向けて自治体の金遣いが粗雑になっていった頃です。
行政の施設に『芸術』を取り入れる余裕というか無駄遣いが見境いなくなりはじめた頃のものです。
公共施設に『芸術作品』という設備を税金で作ることが、なんとなくステータスのような錯覚にとらわれていたのかもしれません。
問題となった作品が芸術かどうかは、作家が決めるわけでも持ち主が決めるわけでもないと思う。
その時代の社会だったり、歴史文化が芸術としての価値を認めるかどうかにかかわってくるのではないでしょうか。
仮に、この作品がロダンの「考える人」だったら、今回のような問題は生じなかったはず。
万人が芸術作品と認める域に達していない程度のものであったことで認識の違いが生じたんだと思います。
施設を作るときに芸術作品として購入したなら、それなりの対応が必要だと思うが、そもそも子どものための施設には大枚をはたいて取り扱いに窮する芸術よりも、子どもの創造性を育む優れた遊具のほうがいいと思う。
作品を改変されたと怒る作家の気持ちも分かるが、自分の作品に固執するばかりではなく所有者の都合にも配慮した柔軟な思考があっても良いのではないか。
所有者も芸術に限らず作り手の想いに配慮した、取り扱いが必要だと思う。
芸術作品だからなんでも改変はダメというのでは芸術家のエゴだと思うので、人が精魂込めて作ったものに対しては、わけ隔てなく価値を見出し、社会的な価値が高いと認められたものには取り扱いに注意することを心がけてもらいたい。
**参考法令 同一性保持権
同一性保持権とは、著作者人格権の一種であり、著作物及びその題号につき著作者の意に反して変更、切除その他の改変を禁止することができる権利のことをいう(著作権法20条1項前段)
ただし、建築物の増改築・修繕等に伴う改変の場合には、同一性保持権の適用が除外され、改変が認められる(著作権法20条2項)。
今回の芸術が、建築物の付属設備なのか、単独の著作物なのかで判断が分かれそう。