2011年03月20日

・放射能の危険性が低く見せられている 2

恐れていたことが次々と現実になっています。

原発被害地域からの農産物に基準値を大幅に超える放射能が検出されてしまいました。

汚染された農産物が出荷停止になるのは当然ですが、これによって東日本全域の農産物への風評被害に波及しないことが望まれます。


そのためには、国民に対して正確な情報提供が必要です。

ところが、政府の発表は安全を誇張するあまり、客観的な評価を無視して主観的な表現に陥ってしまっています。

放射能に汚染された農産物の『安全性』を表現するために、CTスキャンを安全の指標に誤用してしまっています。

枝野幸男官房長官は19日の記者会見で、福島県内の原乳と茨城県内のホウレンソウ6検体から、食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと発表した。
枝野氏は今回の検出と同量の放射性物質のホウレンソウと牛乳を1年間とった場合の被ばく線量に関し、牛乳がCTスキャン1回分、ホウレンソウが5分の1程度と説明。「ただちに皆さんの健康に影響を及ぼす数値ではない。冷静な対応をお願いしたい」と呼びかけた。


枝野氏はCTスキャンが健康診断に使われるので『安全な被ばく』と勘違いしているようですが、CTスキャンは危険を伴う被ばくリスクを理解してガンを早期発見するための手段です。

 参考記事 ⇒ CTスキャンの被爆量、想定より多かった 数十年後にがん発症リスク

毎日のように口にする一種類の食べ物から、CTスキャン1回分に相当する被ばくを受けるということは、安全どころから相当危険な状況であるわけです。


CTスキャンに代表される放射線検査は、急性期の放射性障害が起こる可能性は皆無だと言われていますが、同時に、数か月 - 数十年後に初めて顕在化してくる悪性腫瘍のリスクの増加、あるいは子孫への遺伝的影響があります。

これらは確率的影響と呼ばれ、そのために放射線検査は必要最小限のみ行い無駄な被曝をし ないようとどめることが原則であるといわれています。

放射線の安全性を誇張するために、胸部X線検査やCTスキャンを比較の対象にすることは逆効果です。


暫定基準値は放射性物質にさらされた食品の出荷制限などを検討するためのもので、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受けて政府が設定した値です。

その政府が、自ら設定した基準値をないがしろにして主観的な評価基準を使ったら、国民は混乱するし、政府への信頼性も揺るぎます。

暫定基準は、一定の安全率を見ているので健康には影響ないという保守的な専門家もいますが、中立的な専門家の意見では、「今回の検出値は暫定基準の数倍に達しているので、安全とは言い切れない」と述べていました。


福島原発の事故で私たちの生活環境に放出された放射能の影響が大きくなるにつれて、政府やマスコミの発表はどんどん主観的に、あるいは定性的になっています。

本来なら、より客観的に、定量的に分析されなければならいはずです。

日本国民は、真実を突きつけられることを避ける国民性だということでしょうか。

発表する側に原因があるのか、受け入れる側に合わせているのか、問題の本質の所在に困惑するばかりです。


**関連記事

大震災・放射線と食品 正確な情報発信が肝要だ  琉球新報
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-175023-storytopic-11.html

福島第1原発事故 原乳、ホウレンソウから放射性物質--福島・茨城産
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110320ddm041040122000c.html

いわき市が全15万人に安定ヨウ素剤を配布「高い濃度に備えた」と市長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110320-00000511-san-soci

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Posted by komachan at 09:37│Comments(2)安全
この記事へのコメント
政治家の人も大抵の人もCTのリスクは承知していると思いますよ。実際定量的と言いますが、定量的にホウレンソウだのの数値を出すと、すぐに何百倍だのという報道がされ、皆さん現にパニック状態に陥っていませんか。
実際、皆さん怖いんですよ。目に見えない放射能物質が・・。
どう説明したって、安心なんてありません。
本来はしっかりした説明を、しっかりと理解することが大切ですが、理系の方ならともかく、年配のおばさま方にはちょいと理屈めいたことは難しいんです。
むしろ、こういうブログの内容をみた方が、また危険なんだっていうイメージだけで受け取ってしまってパニックが増幅されることも。
原発が事故になった時点で、すでにリスクは飛び散っている。だけど、それを過度に恐れて経済が回らなくなったり、人々がパニックから抜け出せなくなったりしたとき、本当に怖いのはその時ではないでしょうか。それこそ日本沈没になっちゃいますよ。

こんなとき、政府批判したっていくらでも出てきます。誰がやったって内容と量の差があるにせようまくいかないものです。
批判も時に大切ですが、今ではない気が私はします。

というか、政府への憤りはもちろんありますが、それは復興が軌道にのりはじめてからにしてもいいのかなぁなんて思いますよ。

今は発信する側も、受け取る側もあえて脱バニックを意識した方が結果的に良いと思います。
Posted by 通りがかりなのにすみません。 at 2011年03月21日 09:46
家庭にいる理系の方々が政府を信頼しない状況では、それを見聞きするおばちゃん方の不安はいつまでたっても改善されませんね。 不信感を増幅しないために政府の言いなりになるという考え方も否定しませんが、一方では不審に思っている方が共感できる場を提供することで、パニックが増幅することを防ぐのも大事だと思いますよ。 国民に安全な指標を示せない政府に警鐘を鳴らすことは、おっしゃることのリスクを考慮しても必要な場合があります。 ツイッターなどに蔓延する有名人の過激なデマの方が、よっぽど不信を煽っていると思うので、穏健派の皆さんはそちらの防止にもご尽力ください。
Posted by komachankomachan at 2011年03月21日 10:53
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