2008年08月02日
・伊那市が市民学習会の阻止に介入

上山田区は、候補地に属してはいないが、桜井・天伯水源地付近から400メートルほどの場所に住宅が8軒あり、候補地となっている北新区の3軒に続いて近い距離となっています。
上伊那広域連合と伊那市では、住民への理解を深めようと「ごみ処理施設学習会」を計画しています。
演題は、『ごみ焼却施設の環境保全対策』。
「焼却炉は安全です」と強調するための講師を招いています。
一方の住民側は、新ごみ中間処理施設の建設候補地、伊那市富県「天伯水源付近」の地元、桜井・北新両区や周辺の市民有志でつくる「ゴミ焼却場を考える会」が7月20日に学習会を富県ふるさと館で開いています。
地元を中心に100人余が参加し、関心の高さをうかがわせた。
学習会は「建設予定のゴミ焼却場の安全性を考える」と題し、元長野大学講師・元県廃棄物問題研究会長の関口鉄夫氏が講師を務めた。
その際、関口さんは、建設候補地に決まった三峰川橋下流左岸の水田地帯を今月5日に視察したとし、地図や航空写真から分析しただけでも「全く(建設の)適地でない」と感想を述べています。
「焼却炉は危険です」と強調する立場。
ところで、この住民側の学習会が伊那市の介入で開催が危ぶまれる事態を迎えていたことは公には知られていません。
学習会の会場に公民館の予約を入れたところ、公民館主事は申請を保留し、教育委員会にお伺いを立てました。
教育委員会が行政から独立した機関であることは、大分の教員不正採用で社会の知るところとなりましたが、伊那市では行政の下部組織として情報が垂れ流しになっています。
教育委員会でも取り扱いに苦慮し、副市長からさらに市長の決裁を仰ぐまで上り詰めてしまいました。
誰一人として責任を取りたくないので、上司に判断を仰ぐことで責任逃れしてますね。
市民が地域の課題を自主的に学習することは、公民館活動としても歓迎されて当然のはずなのに、どうして受け入れを拒む対応がとられるのか。
挙句の果てには、市の部長クラスが住民代表宅を訪れ、「学習会の開催にご配慮いただきたい」と申し入れてきたそうです。
「配慮しろ」とは、暗に『中止にしろ』と言っているのは明らかですから、行政が住民の学習を阻止する姿勢を示したといえます。
公民館を利用しての地域問題の学習を行政が阻止するということは、
・教育委員会の独立性がないがしろにされている
・個人情報が市役所内で無造作に取り扱われている
・住民の知る権利を奪い取ろうとしている
・学習会を開催されると知られたくない事実が広まることを恐れている
行政の正義は、そこには微塵もありません。
住民の学習の機会を奪い取ってでも『安全』を強調するのは、危険性を隠そうとする思惑があることの裏返しです。
市と広域連合では、排出ガスについて、「ダイオキシンなどについては国の排出基準を下回る数値を設定しているし、たとえ基準を超えることがあっても、運転を停止するなどの対応をする。」と答えています。
基準を守れない可能性を認めているのですから、安全だけを強調するのではなく、常に危険を内在している施設であることを住民に納得してもらった上で協力を求めることが必要です。
普段、私たちが乗っている自動車は、安全性は高いですが頻繁に事故が起きます。
さらに安全性の高い飛行機で死亡事故に遭遇する確立は、438年に1回。
比較すると、米国1国の車による1年間だけの死者の数でも、ライト兄弟が初飛行に成功して以来の航空機事故の死者よりも多い。
でも、飛行機は危険だからと回避する人は非常に少ない。
自動車が絶対に安全ですと『誇大広告』していたら乗っていても不安ですが、運転免許の取得や更新の際に、事故の実態がまざまざと示された上で納得して運転しているので不安を押さえ込むことができる。
危険を内在しているが、安全性を高める努力をしている施設がごみ焼却炉です。
伊那市のやり方は旧態依然とした『お上』からのお達しに従わせようとするもの。
市民に用地選定の責任を肩代わりさせたのですから、住民の理解を深める際には市民の権利を最大限に尊重して協力を惜しむべきではないと思います。
駒ヶ根のゴミを処理する施設の建設が、こういった非民主的な行政圧力によって成り立っているかと思うと暗澹たる気持ちにさせられます。